松尾芭蕉
まつおばしょう
(1644-1694)
江戸時代前期の俳諧師
伊賀国出身。俗名は宗房。無足人(上層農民)の家に生まれ、侍大将の藤堂家に奉公しながら俳諧を嗜み、京で北村季吟の指導を受ける。1672年、江戸へ下って俳諧師となり、深川に草庵「芭蕉庵」を結んだ。40歳を過ぎて漂泊の旅に出、「野ざらし紀行」「笈の小文」「おくのほそ道」などの紀行文を記し、道中の大坂で病没。貞門派・談林派の俳諧を脱却し、わび・さび・軽み・不易流行といった理念「蕉風」を確立、後世に俳聖と仰がれた。
俳諧を好むようになって久しい。しまいには生涯のはかりごとになってしまった。…時には立身出世も願ったが断念し、しばらく学問で己の愚かさを悟ろうとも思ったが叶わず、遂には無能無芸にして、ただ俳諧一筋を貫くことになった。西行の和歌においても、宗祇の連歌においても、雪舟の絵においても、利休の茶においても、その道を貫いているものは一つである。
「笈の小文」序
関連人物
- 藤堂蝉吟(俳人):主家の継嗣。若き宗房と共に俳諧を学ぶが早世。
- 北村季吟(歌人・俳人):師。
- 松永貞徳(歌人・俳人):貞門派の祖。初期の芭蕉が影響を受けた。
- 西山宗因(連歌師・俳人):談林派の祖。初期の芭蕉が影響を受けた。
- 山口素堂(俳人):同門として交流。
- 宝井其角(俳人):高弟。
- 服部嵐雪(俳人):高弟。
- 河合曾良(俳人):門弟。「おくのほそ道」で随行。
- 与謝蕪村(俳人):芭蕉の影響を受けた。
- 正岡子規(俳人):芭蕉を称揚しながら過剰に礼賛する風潮を批判。
参考資料
- 松尾芭蕉像(早稲田大学図書館蔵)
(2017/08/25 改作)