橘奈良麻呂
たちばなのならまろ
(721?-757)
奈良時代の公卿・歌人
橘諸兄の長男。父の権勢を背景に出世を重ね、大学頭・民部大輔などを歴任、29歳で参議に抜擢される。父の失脚後に兵部卿となり、光明皇后・孝謙女帝の後ろ盾で専権を振るう藤原仲麻呂の排除を画策。大伴氏や佐伯氏などに呼び掛け、仲麻呂誅殺と孝謙廃位のクーデター計画を進めるが、密告により発覚。逮捕後の聴取に対して朝政を批判した。「続日本紀」には処罰の内容が記されていないが、一味と同じく獄死したとみられる(橘奈良麻呂の乱)。
今や天下は乱れ、人心は定まるところがない。もし他氏が王を立てるような事があれば、吾が一族は空しく滅亡するであろう。願わくば大伴・佐伯両氏と共に黄文王を立て、他氏より先んじて、万世の基礎を築きたい。
「続日本紀」巻第廿
天平宝字元年(757)7月4日条
関連人物
- 橘諸兄(公卿):父。宴席で無礼があったとの密告があり引責辞職している。
- 光明皇后(聖武天皇の皇后):伯母。不穏な動きをする奈良麻呂らを戒めた。
- 孝謙天皇(第46代天皇):仲麻呂を重用。皇位廃立の標的とされた。
- 藤原仲麻呂(公卿):政敵。奈良麻呂の計画を未然に察知し、一網打尽にした。
- 大炊王(皇族):仲麻呂により皇太子に擁立された。後の淳仁天皇。
- 黄文王(皇族):大炊王に代わる新帝候補の一人。逮捕後に獄死。
- 道祖王(皇族):大炊王に代わる新帝候補の一人。逮捕後に獄死。
- 大伴古麻呂(貴族):反乱計画の同志。逮捕後に獄死。
- 大伴家持(歌人):交友。反乱計画とは距離を起き、連座を免れた。
- 佐伯全成(貴族):反乱参加を拒み続けるが、巻き込まれて自害。
- 橘嘉智子(嵯峨天皇の皇后):孫。
(2016/10/08 改作)